問屋・メーカー仕入れをすべて辞めた振袖店の末路― オリジナル振袖で勝負した結果、業界の“常識”がひっくり返った ―

「同じ振袖ばかりだな」と気づいた日

成人式の展示会を回ったことがある人なら、
一度はこう感じたことがあるかもしれません。

「どの店を見ても、なんだか似ている…」

柄、配色、雰囲気。
店名は違うのに、振袖は驚くほど似ている。

理由はシンプルです。
ほとんどの振袖店が、同じ問屋・同じメーカーから仕入れているから。

私たちも、かつてはその一員でした。


問屋仕入れを辞める=安定を捨てるという選択

問屋仕入れには、明確なメリットがあります。

  • 売れ筋が分かっている

  • 在庫リスクが少ない

  • 接客マニュアルも作りやすい

正直、経営は楽です。

それでも、ある違和感が消えませんでした。

「この振袖、他の店にもあるよね?」

お客様から言われた、たった一言。

この瞬間、すべてが変わりました。


「誰とも被らない振袖」を作ると決めた

私たちは決断しました。

問屋・メーカー仕入れを完全にやめる。
すべてオリジナル振袖で勝負する。

当然、周囲からは止められました。

  • 「リスクが高すぎる」

  • 「原価が上がる」

  • 「素人が作って売れるわけがない」

業界的には“無謀”とされる選択です。


オリジナル振袖制作で直面した現実

実際、簡単ではありませんでした。

  • 図案は何度も描き直し

  • 配色はミリ単位で調整

  • 生地・金彩・刺繍の選定

  • 職人との衝突

1着完成させるのに、想像以上の時間とコストがかかります。

しかも、売れる保証はゼロ。

正直、何度も不安になりました。

そしてついには振袖の概念を変える形までつくってみました。


それでも起きた「想定外の変化」

ところが、展示会初日。

あるお嬢様が振袖を見て、こう言いました。

「これ、ここにしかないんですよね?」

その瞬間、表情が変わったのです。

  • 写真を何枚も撮る

  • 家族で相談が始まる

  • 他の振袖を見なくなる

“比較”が終わった瞬間でした。

オリジナルセットアップ袴

値引き交渉が消えた理由

オリジナル振袖に変えてから、
最も大きく変わったのは「価格の話」でした。

以前は必ず出ていた、

  • 「もう少し安くなりますか?」

  • 「他店ではこのくらいで…」

これが、ほぼ無くなったのです。

理由は明確です。

比較対象が存在しないから。


「振袖を売っている」のではなかった

気づいたことがあります。

私たちが提供していたのは、
振袖そのものではなく、体験と物語でした。

  • デザインの背景

  • どういう想いで作ったか

  • 誰のための振袖なのか

それを知った瞬間、
振袖は「商品」から「特別な一着」に変わります。


オリジナル振袖で起きた3つの変化

① 価格競争からの完全離脱

安売り合戦に巻き込まれなくなりました。

② 指名来店が増えた

「この振袖が見たくて来ました」という来店が増加。

③ 口コミの質が変わった

「安かった」ではなく
「ここでしか出会えなかった」という声へ。


業界の常識は、必ずしも“正解”ではない

問屋仕入れが悪いわけではありません。
ただし、それは平均点を取り続ける選択です。

一方、オリジナル振袖は、

  • リスクが高い

  • 失敗すれば致命傷

  • でも、成功すれば代替不能

「選ばれる理由」を持つ店になります。


最後に|振袖は、人生で一度の“記号”になる

成人式の振袖は、
ただの衣装ではありません。

  • 写真に残る

  • 家族の記憶に残る

  • 本人の人生にも残る

だからこそ、
「どこにでもある一着」ではなく、
「あなたのための一着」であるべき
だと、私たちは思っています。

問屋・メーカー仕入れを辞めたあの日の決断は、
今では間違いなく、人生で最も正しい選択のひとつでした。

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